情報通信研究機構 新世代ネットワーク研究センター

光波量子・ミリ波ICTグループ テラヘルツプロジェクト

 情報通信研究機構(NICT)におけるテラヘルツ技術関連活動(小金井のテラヘルツ(THz)帯半導体素子関連、KARCのTHz-TDS関連、小金井の旧SMILES-Gの受信器開発・大気伝搬関連)を統合・発展する形(内部では、新世代ネットワーク研究センターと電磁波計測研究センターの連携による)で、2006年4月より5年間の「テラヘルツプロジェクト」がスタートした。

 同プロジェクトでは、潜在的に低価格化・ロバスト化が容易な半導体技術を用いた発振器・受信器等の小型高性能THzハードウェアの研究開発を軸に、THz帯の産業利用を実現する上で必須の材料データベース整備・大気伝搬特性モデル構築等を実施し、THz技術の産業利用を先導することを目標にしている(上図参照)。また、NICTのTHz技術関連委託研究「ICTによる安全・安心を実現するためのテラヘルツ波技術の研究開発(Stand offイメージャとStand offガスセンサの研究開発)」も2006年度よりスタートしており、これとNICT自主研究の同プロジェクトは緊密に連携を取って研究開発を実施する体制となっている。

 同プロジェクトにおいては、現在までにTHz帯量子カスケードレーザ(THz-QCL)、THz帯量子井戸型光伝導検出器(THz-QWIP)などの素子開発に成功している(下図)。また、2007年8月には産業利用のためのTHz材料スペクトル-オープンデータベース(http://www.thz-spectra.com)の構築を開始し、その有効性を実証する例として東北大学農学部小川教授らの協力を得て【西洋古典絵画における顔料・展色材のデータベースを構築】した。その結果は朝日新聞(2007年4月22日朝刊)やネーチャーフォトニクス(IEICE ELEX 4, 258-263 (2007), Nature Photonics 1, 310 (2007))にも紹介された。データベースは上記のWEBにアクセスし簡単な登録をすることで利用可能である。また、理化学研究所のテラヘルツイメージングチームと共同でテラヘルツ電磁波の大気伝搬モデル構築に向けた伝搬実験をTHz-TDSシステムやフーリエ分光器を用いて実施している。

文責  寳迫 巌