テラヘルツテクノロジーフォーラム: 設立趣旨

 最近、"テラヘルツ"という言葉がよく使われるようになったので、多くの方々が、一度くらいはこの言葉を耳にされているだろうと思われます。

 "テラヘルツ"は周波数がTHz(10の12乗ヘルツ) の単位で呼ばれる光と電波の中間にある周波数領域で、テラヘルツ波が脚光を浴びるようになって10年以上が経過しました。テラヘルツ波がこのように注目されるようになったのは、量子エレクトロニクスや半導体工業の目覚しい進歩により、この領域の新しい放射手法の開発や超高感度検出手法の開発がなされ、基礎研究だけにとどまらず、新しい応用をも指向した研究が世界的に活発に行われているからであります。

 光と電波の間の電磁波は1950年前後から、その時々の先端技術を駆使した研究開発が開始され、その後不思議なことに、20年毎に画期的な新技術が現れて、この分野を飛躍的に発展させてきました。熱光源しかなかった1950〜1960年代には"遠赤外"の名で呼ばれていましたが、レーザーが現れるようになった1970年代前後からは"サブミリ"の名で、またフェムト秒レーザー技術が確立してコヒーレントなモノサイクルパルス波の発生が普及するようになった1990年頃からは"テラヘルツ"の名で呼ばれるようになって現在のテラヘルツブームを引き起こしました。1つの技術でいったんブームが起こると、他の技術も勢いづいてきて、領域全体が盛り上がりを見せています。

 "遠赤外"も"サブミリ"も"テラヘルツ"も定義する範囲に若干の差はあるものの、これらは光と電波の間のほぼ同じ領域を指しています。この領域は光の側からは長波長側になり、電波から見ると短波長側もしくは高周波側となり、光学的な考え方や技術と、電波の考え方や技術を融合させて新技術を作っています。この光と電波の境界領域はまた色々な学問分野が交わる学際領域でもあります。例えば国が定める重点4分野のライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料のどの分野とも深く関わっており、今後益々その重要性が増してくるものと考えられます。

 すでにテラヘルツ波の安全性や電波、可視光、X線にない特性、有用性を認識した欧州や米国、とりわけ欧州では、いくつかの大型プロジェクトがスタートし、精力的な研究開発が行われています。

 我が国に於いてもこれまで20グループ以上で特長のある研究が進められ、それぞれ高い技術レベルを持つに到りましたが、色々な専門分野の研究者が、或いは産官学が連携を取りながら、新しいプロジェクトを推進していくという体制がとられていませんでした。欧州や米国に勝るとも劣らない実力を持ちながら、体制が出来ていないため、オリジナルな成果や知的財産権の面で欧米の後塵を拝することにもなりかねないとの危惧から、有志が集まって1年をかけて「テラヘルツテクノロジーフォーラム」立ち上げの準備を進めて参りました。

 従来型の産業構造ではもはや立ち行かなくなり、新産業の展開が望まれている昨今、多くの人々の叡智を結集してテラヘルツテクノロジーが、そしてこのフォーラムが、日本発の新技術の発信や新産業創出に役立つことを切に願う次第であります。

  2003年 8月4日
設立発起人 代表  阪 井 清 美